先陣

 我が棚の花の季節到来の先陣はイトランの野生種です。早春の冷たい風の中を微かな香りとともに咲き出してきました。蕾の時は紫紅色ですが咲き上がると薄い色になってしまいます。野生種なのに性質が弱く,一昨年まで黑斑病で醜くなっていましたが,気を入れて消毒を行ったためにしだいに葉の痛みが取れてきました。芳香が清々しいです。

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 光琳は今も昔も日本春蘭を代表する名品です。明るい朱金色に咲きました。山採り当時の写真と同じ色ですが,黒崎さんが咲かせたのはもっと朱色が乗ったように思うのですが,最近はどの展示会で見ても同じような明るい朱金色に咲いています。遮光の違いかと思って(昔は遮光が甘かった)手前の花はキャップせずに咲かせてみましたが,ご覧のようにただのくすんだ朱金色にしか咲きませんでした。あの朱色はどこに行ったのでしょうか。私は黒崎さんの言うように置き場所をやや遮光の効いたところに決めて年間動かさずに作っていますが,木は作れても花色はうまくゆきません。



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 花の季節に先んじて出版社から春蘭の写真集が発売されました。楽しみにして手にとってみましたが,少し残念なことに色がもうひとつ。綺麗ですが花の生きた色が出ていません。デジタル処理でそうなるのか,制作担当者に春蘭の知識がないためになるのか分かりませんが,これでは品種の色の特徴がうまく伝わりません。微妙に品種の紫がかったりとか,朱色がかったりとかのニュアンスがありませんので,読者の目に留まるのは花形ばかりになるのでしょう。もっと自然のもつ変化のバラエティーや深みが少しでも伝われば春蘭の面白さが増加すると思います。
 ただ,あれこれ言っても春蘭の本が出たことは喜ばないといけませんね。

厳冬

 大寒から立春までは一年で一番寒い時期です。温暖な当地でも気温がマイナスにあることもあり,防寒のため蘭の上に新聞紙を敷きます。少々の寒さならこれで十分。昼になれば5度以上には上がるので,昔ほど心配することはなくなりました。地球温暖化は気象庁の統計から年平均値の推移を見ても右肩上がりに上昇しているのがわかりますが,特に体感することは秋の訪れが遅く夏が9月遅くまで残るようになったことでしょうか。その点,春の訪れに関しては,それほど昔と変わらないのではないかと思っています。ともあれ春蘭にとっては冬は寒いなら寒いままが良い。厳冬期に春めくような暖かい日があると蘭は戸惑ってしまい,花色に影響を与えてしまいます。
 我が棚には寒蘭も同居しています。春蘭には良い寒さも寒蘭には悪く困ります。寒蘭は年末まで寒さに合わせ、年初から陽を取りながら最低10度以上の温度を与えてやり,2月下旬には15度ぐらいに持って行ゆき,新芽を5月に出させるようにするとよくできます。このように春蘭と寒蘭は冬の育て方が違うので,両方を同居させている場合はどちらかにあわせてやるしかありません。
 
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暖冬

 あけましておめでとうございます。 
 当地は 昨年から暖かい冬が続いています。春に花を咲かせる蘭にとってはあまり有り難くない暖かさです。赤花ブームの頃にはその赤の色を出すためには日平均5度前後の日が1ヶ月続く必要があるなどと言われて、冬はやっぱり寒さで寝かせ、花時には蓄えた糖分を一気に吐き出させるようにすることが良い花を咲かせるコツのように言われていました。しかし、今冬も蘭にとってはゆっくり眠れないようです。
この暖かさで、光琳や神楽姫などの早咲きの花物は蕾が動き出してきました。これでは色は期待薄です。

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神楽姫



  蘭舎の西側に大きなビワの木があります。もともと西日よけに植えたものですが、今では幹幅が私の胴体より太く大きくなって枝打ちが必要になってきました。そのビワは冬に花が咲きます。花の少ない季節にハエやアブなどが花の蜜を求めてやって来ます。

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何というアブでしょうか。


 この虫達を見ると私はいつもミツバチのことを思い出します。農薬でミツバチが減少しているという記事は新聞でご覧になった方も多いと思います。ネオ二コチノイドという農薬が原因かもしれないと書かれていて欧州では使用規制が取られているようです。昆虫だけでなく人間にも悪いのではないかとも言われていますが公式には影響は書かれていません。私は少し薬学をかじっていて気にする方で、時に最近記憶力が薄れボケが加速するのが心配で、この薬品の入った農薬は使わないようにしています。この農薬は我々の生活にかなり浸透しているようで、全く関係ないと思っている人の尿からも検出することがあるようです。

狂い咲き

 師走の棚に春蘭の花。昼間の暖かさの影響なのか狂い咲きしています。
 司御前は花時期に咲いて欲しいと思っていたのですが、この時期ではやはり色が出ず魅力がありません。早咲きで温度に敏感な品種なので狂いやすいのでしょうか。
 司御前は本来、日本春蘭赤花素心の頂点にあるべき素質を持った花ですが、このように時期はずれに咲いたり、過去の赤花ブームの頃にも良い花が発表されなかったりで、花付きの悪さも加わって、その素質の高さが十分に評価されないまま今日に至ってしまった品種です。
 希少な赤花である上に素心である貴重さ。このタイプは日本春蘭の数多い銘品の中でも数点しか登録されていません。なかでも司御前は寿紅のあとに出て将来を期待されていたのに赤花ブームの終焉とともに何もかも流されてしまった感があります。半立ち性の葉はあまり大きくならず、葉質も柔らかく女性的。花は内弁をしっかり閉じ、舌は純白。ふっくらとした竹葉弁に澄んだ紅赤色の色あいを見せます。
 以前に咲いた花の写真も載せてみました。


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 黄翔冠も同じく咲いてしまいました。黄翔冠は故黒崎陽人先生の命名品。平成に入った頃、NHKに出演された時、お庭の蘭舎で咲いているのを放映されたことがあります。確か葉上高く3~4花が咲いていました。私の手に入ったのはかなり後になってからです。黄花の白覆輪花との触れ込みでしたが、本性の黄花ではなく咲くに連れて花弁の緑色が薄くなっていくタイプで黄色の発色はありません。

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師走

 12月に入ったというのに暖かい日が続いています。
 我が家の寒蘭は豊雪が最後の花姿を見せてくれています。しっかりと支柱管理ができていないのであまり見栄えが良くありませんが、香りは上々で、気持ちが和らぎます。蘭友が言うには、豊雪のなかには白くならないものもあるらしいとのこと。四国の業者さんから聞いた話だそうですが、私はその話を豊雪とは違う品種では?と疑って聞いていました。確かに正真正銘の豊雪だって夏早く花芽が上がると緑花になりますが、9月になって出た芽なら、必ず白く(正確には白黄色)に咲くはず。緑色でしか咲かないのであれば、それは違う品種ではないのかと思ったことでした。私の経験では、確かに小輪で多花性の系統もあるので、系統があるらしいことはわかります。でも白くは咲いていました。ただ、豊雪も変化して緑にしか咲けないものも出る可能性はあります。本来の豊雪も白く咲いているのは一時でだんだん黄ばんでくるのは金鵄系の血が入っているためで、さらに寒さに当てるとほほ紅が出て、さらに舌には桃色の点も浮かんできます。本来素心であるはずの花に、このように変化が起こるのは寒蘭が複雑な遺伝子を持っている証拠です。本来の姿の裏に変化する姿を隠し持っていることに自然の奥深さを感じます。

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 こちらは紀州産の紅更紗。紅色の微妙なニュアンスと舌が巻かないのがとりえで作っています。葉姿がだらしなく垂れてしまうのもいただけないのですが、なぜか個性的なところがあって、手放せません。寒蘭は豊雪にしても紅更紗にしても支柱を立て真っ直ぐにしないと品格が出ません。放任栽培は時に野趣があるなどと言われますが、うまく言い逃れをしているだけで、それでは山野草と同じ範疇に入ってしまいます。寒蘭を山野草から古典園芸の域にまで上げるには寒蘭の持っている美を手助けして見せなければいけません。寒蘭は本来は野の花なのですから野暮臭さを取り払ってやる必要があります。この紅更紗もしっかりと軸を立ててやればもう少し魅力的になったと思います。

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プロフィール

ゴリョウ

Author:ゴリョウ
東洋蘭との日々の付き合いで感じたことを書いています。

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