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東洋蘭造語雑感(2)

 葉芸用語にも面白いものが数多くある。古い銘鑑には、「金」覆輪、「銀」覆輪にはじまり、虎物の「極」黄や「黄金」、縞物の「雪」白などの色彩表現は蘭を貴重品や家宝として大切に愛した良き時代の感覚を味わうことが出来る。


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安積猛虎


 最近でも先の縞ブームは縞柄の柄性を豊にする絶好のチャンスであったが、残念なことに未消化のままこれからというところで終息してしまった。現代感覚にあふれた良い造語が出現する可能性は次時代へ持ち越されたようである。
 もっとも先のブームでは昭和初期に造られた中押し、中透けの用語解説が研究され、違いを類別する議論が起こったのは成果と言える。ただ、今回これらの用語は柄の状態を分離し定義したまでは良いが、さらにこれらを用いて銘品の分類まで行うのは少し行き過ぎの感がした。


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天遊


 本来は先に述べた、「朱金色」と同様に年により変化する縞柄を網羅的に表現するため造られた用語で、変化し易い柄性を当初から厳密に場合分けする意で造られたわけではないように感じるからである。
 春蘭縞物銘品のなかには確かに中透け縞しか出さない品種もあり、あるいは中押しになったり、また、それらを融合した複雑な柄性にも変化することは充分知られたところであり、これらを無理に分類するとかえって混乱を招く恐れがあるように思われる。それよりも、我々はその不安定で予測が難しく、複雑でとらえどころがない、愛好者を大いに疲れさせる世界がなにより魅力的で楽しく、最も惹かれ、満足してきたことを思い起こしたいものである。


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春晃


 さて他方、最近になって古典園芸を一般に普及させんがためか、これら魅力ある用語を時代にそぐわない、あるいは閉鎖的と椰輸されることに神経質になりすぎた結果、平易な単語に置き換えようとする動きが見られるがこれは大変な誤りであろう。これら特殊な古典園芸用語が人によって様々に解釈される弊害を恐れる前に趣味者ならしっかりとした用語の理解が必要なことを初心者等に説くべきであり、それが豊穣な伝統を持つ古典園芸の世界に浸るための登竜門となっていることを周知させるべきなのである。
 この風潮は最近出版される一般向き東洋蘭関係の図書に用語の解説が省かれていることにも問題がある。さらにこれらの図書のなかには紺覆輪を緑覆輪と訂正したり、紺地を濃緑地に言い換えられてあるものもあり、多分に説明的で学術雑誌を見る印象を覚え、無味乾燥としていて大切な園芸文化が感じられない。私は深い濃緑地を紺と印した先達の感性や表現に言い知れぬ敬慕と共感を覚えるのである。

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鳳凰殿


 そして、東洋蘭界の今後の発展を願うものとして期待することは、新しい品種、それも新しい芸を持つものが出てくることである。 
 このような新しい芸の模索は新芸品による新しいブームをつくり、趣味世界の活性化をも”たらすものである。さらに、これら新芸を指す用語についてもその時代の優れた感覚でとらえたピッタリのいいまわしをぜひ期待する。
 最近ブームになろうとしている色舌芸は現在「べたぜつ」と通称されているが、このあたりで良い言葉を考える絶好の時期がきているのではなかろうか。各地の展示会で出品されている豆花や広弁花のたぐいもしかりである。銘鑑も複芸物が登場し各地で2芸、3芸を兼ね備えた新しい品種も登場しているようである。皆で21世紀へ引き継ぐ素晴らしい造語をいくつも考えようではないか。
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ゴリョウ(御陵)と言います。

Author:ゴリョウ(御陵)と言います。
東洋蘭との日々の付き合いで感じたことを書いています。


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